管理の話
組織とか組織の管理とかいう話をするとき、日本人は軍隊式管理というのをほとんど非人間的管理というのと同意義のこととして扱います。この点については十分に検討しなければならないと僕は思っています。というのは、何もここでは大日本帝国軍が人間的な組織であったなどと強弁したいわけではなく、なぜ大日本帝国軍は非人間的組織であったかという点を検討すべきであるということです。
軍隊という組織はナポレオン以後常に国民的な組織であるべきと規定されるようになったと言えるでしょう。現代戦において軍隊は専門技術者集団であるという点を強調する向きもありますが、現実的に普通の歩兵であれば今でも一年程度の教育で実戦の現場に投入できるのであって「その程度」の話ではあるわけです。国民的な組織であるということは、その国家民族の伝統に則った組織である必要があり、本来軍隊とは非人間的組織であってはならないということです。
では欧米において「合理的」な軍隊組織がなぜ成立し得たかといえば、結局のところ彼の地においては戦争というのが通常状態であったからというのに尽きるのではないかと僕は思っています。ラ・マルセイエーズという歌に象徴されるように戦争が国家民族の伝統の一部を形成していますから、合理的な軍隊組織というのは人間的であり得たわけです。そしてそうした合理的な組織というものが商業の現場においてもごく自然に取り入れられてきたと評することができるでしょう。
では日本はどうかといえば、おおよそ関ケ原を境にして国内には戦争状態はなくなり、シリアスな合理的な組織というのは求められない時代が続いたと評することができるのではないか、ということです。このような社会では組織というのはなんらかの目的の達成のために合理的に機能するものなのではなく、組織それ自体の存立だけを目的とするようになるものです。おおよそこのような伝統を持っている日本人にとって戦争というのはとてもではないが得意なものだとは言えないのであって、自前の組織理論では戦争遂行のための組織をうまく運用することはできないわけです。この為フランス流、ドイツ流、イギリス流の組織運営を輸入したのが日本軍であり、米国流を輸入したのが自衛隊です。
この際一番問題となるのは何かといえばそれは以下の問題です。合理的な組織というのは、一定の水準の「遊び」のようなものを必要とします。しかし、自国の伝統に基づかない組織である日本軍ではそうした遊びを入れることはできず、そもそも組織そのものが輸入品であることもあって致命的な非人間的な組織となっていったいうことです。
では現代日本においてこうした点がどのように問題になってくるのか。それはいよいよ現代社会においては商業行為が全地球的なものになったという点です。日本企業が「人間的」で「軍隊的」な組織管理のシステムを持つ海外企業との競合というのをいよいよ迫られるようになっている。さらに人口ボーナスという利点も失い、このような状況下で組織の存立のみを目的とする日本的組織はいよいよ不利となっています。
ここで組織においてマネージャーのような立場にある人物は改めて「日本には欧米流の組織の伝統は無い」という点を意識すべきであろうと思います。構成員の多くが口でどのように言っていても現状維持を最大の価値基準としている可能性は高いと言い換えることもできます。ですが現代社会ではアパレルをやるのであればスペイン人と戦わなければならないし、経営管理システムをやるのであればアメリカ人やドイツ人と戦わなければならないわけです。このためビジョンに対して合理的に取り組み続けなければ現状維持すら困難な時代であるということです。
こうした問題について、経営者であれば、イノベーションをひたすら外部から購入/導入し続けるというような対処も可能でしょう。典型的には DMM がそういう戦略をとっています。ですがもしあなたがマネージャーであれば、改めて日本社会の伝統を自分の方法で認識し、合理的な組織運営との乖離を認識し、各種の手法を取捨選択し「あなたの文化」というのを作り上げなければならないのです。この点について認識が甘ければ日本における組織の管理という行為において再現性を持たせることは難しいでしょう。
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